「――、そう…ラデュシュ様に会ったの…。」 テドンでの一連の出来事を説明すると、その人は酷く落ち着いた声音でそう言った。そうして振り返ったその人が浮かべていたのは優しい微笑み。 「よかったわね。ティルちゃん、シキ君。」 六年前テドンで起こった事件については知らないと言っていたから、嘗ての仲間の死を悼む言葉が紡がれるとばかり思っていたからその言葉には驚いた。 後になって考えてみれば、長い間消息不明であった上にその子どもたちとこの町で再会を果たしたのだ。覚悟は既に出来ていたのだろう。 もしかしたら、経緯は知らなくても彼の人が既にこの世にいないという事はとうの昔に気付いていたのかもしれない。 「あの人はね――」 どう返答を返せばいいか解らず黙りこくった私たちに言い聞かせるよに、その人はゆっくりと昔懐かしむようにして語り始めた。 「優しくて、厳しくて、 未来を知ってしまう力ゆえに人と深く関わりたがらない節があったんだけど、 家族の事はとても大切に思っていたから――」 「だからどんな形であれ、あなたたちと再会できて、幸せだったんだと思うわ。」 優しい眼差しに彼の人に抱きとめられた感覚が蘇り、悲しかったわけではないのになんだか無性に泣きたくなった。 1st top ティル視点です。アリアさん(ユウとユイの母)のラデュシュ語り。 テドン後アリアハン帰還時ということで。 多分航路的にランシール後。ルーラを使えばテドン後何時でも。 「人と関わりたがらない」にはオルテガさん達といった例外もいます。 ラデュシュはアリアの魔法の師でもあるのでアリアはラデュシュの事を様付けで呼びます。 |