漆黒1






「ヤヨイ!見て見て、この人形!!可愛いよ〜!!」
「リク!この腕輪もとっても綺麗ですよ!」
「……リク。」
 黒髪の短髪の少女と同じく黒髪の長髪の少女が露店に出回る商品を見て騒ぐ中、 その後方で彼女達よりも若干幼い顔立ちの金髪の少年――に見えるが少女のようにも見える――が声を低くして唸るようにして呟く。
「な〜に暗い声出してるんだよウェルド。之でも食って機嫌直しな。」
 青銀の髪のローブを着込んだ青年が少年に声をかけ、なにやら甘そうな菓子を手渡す。
「…だから、お前たちがそうやって…」
 少年は手渡された菓子を見てさらに声を低くしてわなわなと体を小刻みに震わせながら言う。
「ウェル?どうかしたの??…セルディが何かしたの?」
 流石に気になって駆けつけた少女に問われ、青年は首を横に振る。
「どうしたもこうしたも…」
 少年の怒りは頂点に達したようですぅっと思いっきり息を吸い込むとそれを一気に吐き出した。
「そうやってお前たちが無計画に使うから旅の資金が底をついたんだろうが〜〜〜!!!!」
 アリアハンを旅立ってからたったの一週間、リクたち一行に危機が迫っていた。




  ロマリア ―漆黒―






「いや〜。悪い悪い。路銀が尽きかけてるとは思いもしなかった。」
「嘘を吐け、この確信犯。」
 反省の色の欠片も無い笑みを浮かべてワザとらしく言うセルディをウェルドがじと目で睨みつける。
「でも、どうするのですか?お金が無ければこの先困るのでしょう。」
 そう訊ねるヤヨイはジパングにいた頃には殆ど屋敷の中で不自由ない暮らしを送っていたため、金銭の管理能力は皆無であるらしい。
「まあ、何とかしないといけないのは確かだな…」


 考え込み黙り込んだ四人の中で一番初めに口を開いたのはセルディだった。
「モンスター格闘場で稼ぐとか。」
「昨日お前がそう言ってリクと二人して負けてきたんじゃないか。」
 図星を突かれて言葉を詰まらせた間にヤヨイが案を述べる。
「魔物を倒して周っては駄目なのですか?お金や道具なんかを落としていくものもいるのでしょう?」


 魔物の中には襲った人間から奪い取ったのかゴールドや道具を落としていくものがいる。 そういった魔物達を倒していけば金を稼ぐことが出来るうえに剣や魔法などの経験を積むことも出来る。


「あ〜、それは最終手段。面倒だから。」
「…お前の都合かよ。」
 もはや怒ることにも疲れたのかウェルドが力なく突っ込みを入れる。
「あっ」
 突如リクの上げた声に一同の視線がリクに集中した。
「これなんか、どうかな?」





 宿の一室、四人は着々と旅の準備を進めていった。その部屋の中央あたりの床には一枚の紙きれが置かれている。
 ローブの上に外套を羽織りながら、セルディはその紙へと目をやった。


「『指名手配。盗賊カンダタを捕まえれば5000G、金の冠を取り戻せば3000G』ね。よく見つけたなこんなの。」
「えへへ〜」
 荷物を纏めていた手を止めリクは得意気な声を上げた。
「って言っても、たまたま目に入っただけなんだけどね。」
「いいじゃありませんか。おかげで一文無しにならずに済んだわけですし。」
 ヤヨイは布にくるんだ鉄の槍を背に背負う。多少、槍術の心得があるという彼女の為にこのロマリアで購入したものだ。


「準備オッケ〜!みんなは?」
「ああ。いつでもいける。」
 ウェルドに続き他の二人も頷いたのを見て、リクは笑顔を浮かべて言い放った。
「よ〜し、盗賊退治にしゅっぱ〜つ!!」



















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