「いや、まさかこんな所で皆と再会する事になるなんて。偶然ってあるものだね。」 とある町のとある飲食店で食事を摂りながら、アトラスは同じテーブルを囲むアモス・テリー・ドランゴを見渡した。 近頃町の傍で暴れているという魔物の噂を聞きつけて訪れた旅先で、偶然彼等と再会したのだ。 「本当ですね! いやー、まさかドランゴさんテリーさんに引き続きアトラスさんとまでこうして再会することになるとは。世界って案外狭いものですね。」 此処に揃った面子と順々に偶然の再会を重ねていったというアモスの発言に驚きつつ、アトラスもアモス同様世界の狭さに驚きを隠せず相槌を打つ。 とはいえこの面子、世界中の町の人々の噂話などから、危険な魔物や場所についての情報を仕入れ調査や討伐に出掛けるといった、 共通する行動をとっているのだから、全く目的の違う冒険者などよりは再会する可能性が高いのが実情である。 「それにしても、テリー、調子でも悪いのかい? いつもなら率先して前に出て戦ってるのに、さっきは後衛でサポートに徹したりして。」 何んともなしに紡がれたアトラスの科白に、アモスは何やら気まずげに苦笑を浮かべ、テリーは何処か重かった雰囲気をさらに重苦しいものへと変えた。 何やら触れてはいけないところに触れてしまったようだと察したアトラス。しかしその事情が解らず彼は首を傾けた。 そんな彼に、ドランゴがいつもと変わらぬ調子で口を開く。 「ぐるる…テリー、よわくなったの…ミレーユと、チャモロのせい。」 「はいっ?」 ドランゴの片言の説明では事情が理解できなかったアトラスは、落ち込むテリーと苦笑するアモスに説明を求めた。 「実はですね…」 「…成程。」 アモスの説明にアトラスは相槌を打った。そして落ち込むテリーへと視線を戻す。 「テリー、別にミレーユとチャモロも悪気があったわけじゃないんだから…」 「…姉貴の顔なんて、暫く見たくない……」 (うわぁ、これはかなりの重症だ。) 姉馬鹿のテリーがこんなことを言うなんて。アトラスは自分のことは棚に上げてそう思った。 「テリー、落ち着いて!傷は浅い!」 なんとか励まそうとするアトラスだが、テリーは重苦しい雰囲気を放ったまま此方の声に耳を傾けようとはしない。 「……どうせ俺なんて、バトルマスターだった時から他の奴が『ばっちりがんばれ』とか『呪文使うな』とかの作戦で戦ってる時に一人だけ『命大事に』なんて作戦言い渡されて傷付いた仲間のために賢者の石を使うしか役目の無かった役立たずさ…」 身に覚えのあるアトラスはぎくりと身を強張らせた。 「いや、それはテリーが回復呪文を覚えてなかったから、魔力を使わずに体力を回復させるのに丁度良かったからであって…決してテリーが弱かったからとかそういう理由じゃないから!!」 懸命に弁解するがテリーを回復要因としていたことは事実である。 「そ、そうだ、テリー!魔物退治に行こう!!」 「魔物退治?」 何とかテリーの気を逸らそうとしたアトラスの提案は、アトラスの思惑通りテリーの気を引くものであったようだ。 興味を示したテリーに、アトラスは更に捲し立てる。 「あぁ。テリーは熟練度が稼げる。人を襲う魔物の量は減る。一石二鳥じゃないか!」 と、なんとも魔物達にとっては傍迷惑な提案の末、四人は再び魔物討伐及び熟練度稼ぎの為のパーティを結成することとなった。 なお、期限はアトラスが城に戻るまでの短時間である。 とはいえ、全員が大魔王を倒した勇者御一行の面々である。数時間の魔物退治の結果、この町の周辺に住む凶暴な魔物達は全滅し、町に平和が訪れたという。 しかし、真の目的であったテリーのはぐれメタルとしての熟練度はというと、短時間でマスターするほどの経験をえられる訳もなく、一段階熟練度を上げたところでこの日の修行はおしまいとなった。 アモスとドランゴ、今回はアトラスをも巻き込んだテリーの武者修行の旅はまだまだ続く。 MENU NOVEL TOP 〜あとがき〜 短い話なので『夢に消えた技術』の執筆後わりとすぐの段階で出来ていたこの話。何故こんなに出すのが遅くなったかというと前作『旅先での再会』が完成しなかったからという理由があります。 という事でテリーのはぐメタ攻略記「ひとりぼっち」の会でした。・・・ストーリー的に全然ひとりぼっちでは無いですね。しかしテリーの苦労はまだまだ続く。まあ、この話、真に可哀想なのは熟練度上げの為に討伐されるモンスターたちな気がしますが。 |